三上山周辺のコクランを求めて
私は、 身近な希望が丘や三上山周辺を珍しい葉っぱを探しながら、自生している山野草を、ずっと追っかけてきた。
とりわけ、林内を歩いていて、ラン類に出くわした時は、愛しい恋人と待ち合わしているかのような高揚感に包まれたものだ。
シュンラン・カキラン・コクラン・銀ランそしてサイハイランと・・・・・。
そんな中、どうしても出会ってないのが、エビネ。
希望が丘文化公園 自然観察ガイドブック(2004年発行)によれば、自生しているとの記録があるのだが。
いずれにしても、簡単に、出会えないのがいいのかもしれない。
さて、コクラン(
城山裾野
)には、あちらこちらで、出会っている。しかし、果柄(かへい)の残骸だけ。どうも相性が悪く、花が咲く時機を逸してしまうようだ。
今年は、三上山山麓の林縁の薄暗いところで、エビネに似た、対になって生えている5~6株のコクランの葉っぱを見つけた。様子をずっと見守ってきた。




この植物の花弁は、色合いと言い、容姿が地味なので、あまり見向きもされない。が、「滋賀の山野に咲く花700種」の書籍に、コクランは「見ていてあきない山野草」と記されていた。私もそう思う。キュートな姿に引き寄せられ、ただただ、自然界の多様性に驚かされた。
花のつくりを眺めていると、黒く四角い部分が唇弁で、虫が乗りやすいような仕掛けになっているようだ。でも、あまりにも花の構造が複雑で、あれこれ仔細に詮索してもいかがなものか。
むしろ、「どうしてこのような姿に進化していったのか」に興が乗った。
花の形が蜘蛛に似ているとかで、クモキリソウ属に分類されている。差し詰め、蜘蛛などの昆虫に花粉を運んでもらうために、このような姿を目指したのであろう。
また、陽光が降り注ぐところが苦手であり、この花名は、黒く見えるのでコクランと呼ばれている。暗いイメージだが、実際は暗紫色である。神秘的であり、 ミステリアス世界にさそいこんでいる、とても気になる色をえらんでいる。
この姿・色が理想とする究極なものなのか。それとも、まだまだ進化の道半なのか・・・・。
指向する花被が昆虫だけでなく、同じ生物の仲間“ひと”をも対象になると、どうなるだろう。
ひとは、形状、形態、色合いといった造形要素から、実在の下に隠れた世界を見だしていく。それ故、人と関わりあうと、現実世界に見かけない優れたアート像を志向するかも。
将来、コクランがどのように変貌していくのか、想像するだけでも、楽しい。いや、人が介してくると、意外にも夢物語でもなさそう。
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