紅葉の木曽駒ヶ岳
千畳敷カールの紅葉は9月20日ころから始まり、10月上旬には紅葉の最盛期を迎える。運がよければ頂に雪の薄化粧を期待して、木曽駒ヶ岳を目指した。
都会で、秋の気配が感じられるころ、高い山ではすでに紅葉が始まる。9月になると冷たい秋雨となり、初霜を見、10月上旬には降雪も珍しくない。緑・赤・白の三段染めの景観に出会うのではと、淡い期待を持って出かけたのだが、今年の紅葉は、残暑が厳しく遅れているようだ。
「前週になって、やっと色づき初めてきた」と地元の人が語っていた。
季節の巡りが少々遅いが、それでもナナカマドがすでに深紅の衣替えをし、潅木のダケカンバも黄金の葉樹に輝いていた。花崗岩の白い山肌に赤と黄の色模様が映え、半割のお椀をしたような千畳敷カールが、豊かな色彩に染め上っていた。
千畳敷カールの景観

宝剣の岩峰が、なだらかな千畳敷のカール壁の景観をひときわ引き締めていた。

つづら折れの「八丁坂」を登り切ると、そこは乗越浄土(のっこしじょうど)というところ。ここを通り越すと駒ヶ岳神社の奥院がある。
夕方の光に染まり、刻々色を変えていく光景は、死後の西方の浄土なのであろうか。現世の世界に別れを告げた仏や菩薩の住む世界の入り口なのであろうか・・・・・。
いや、自然の営みだが、大いなる宇宙の営みであり、言語で言い尽くせない境地に引っ込んでいく。こうべが自ずと垂れるこの光景には、「自然への敬虔の念」が生まれてくるものだ。宗教を超越した世界だ。
友人にこの1枚の写真を送った。「人がこの広大な大自然に立った時、今まで何を知ったといえるのか」との返事があった。
宝剣山荘・左の奇岩天狗岳越しの茜色の光景

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