日が射し込む杉林の冬陰/綿向山
2018年02月25日

日が射し込む杉林の冬陰/綿向山

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nonio

• 野洲市

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 数日前、「綿向山7合目から頂上までの間で、樹氷の海老の尻尾がみられる」と八日市のKさんからメールが届いた。その後、野洲でも身が縛れるような寒さが続き、雪もぱらついた。そうこうしている間に、「明日、行こう」との電話に触発、すぐさま出かけることにした。

  この山には、大勢の人がやってくるので、登山路が再凍結して歩きにくい。初めてのヒミズ谷小屋から、アイゼンを装着して順調に歩を進めた。 高度が上がるにつれて、山肌は多様な色合いを持つ季節と違って、白一色となった。

七合目の少し平坦なったところに「行者コバ」がある。このコバと言う文字の語感は、何時も「安らぎ」を覚えるところだ。 

行者コバから、雪崩の危険性のある谷を横切って行く夏道は避け、冬道を辿った。

 冬季だけ伝う尾根筋は、ずり落ちるほどの急斜面である。掘り込まれた雪の踏み跡を選びながら、登っていくと、樹氷の破片がいたるところに散乱していた。周りの木々は、冷たい付着物を拭い去り、樹肌を生き返らせていた。

私の娘ぐらいのおしゃべりな二人は、写真を撮る私を置いて、「頂上で待っている」と言って樹氷を探しに登って行った。

 一人になって、おそろしく静かだった。

時折、キツツキがあたりの空気を振わすようにコツコツ・・・・と小気味良く木を突く音が静かな森に響いた。すき間だらけの雪の結晶が、手当たり次第に空気の振動を吸収してしまうのであろう、雪に覆われた森は、ことさら静寂が支配していた。この森閑に佇むだけで心が洗われた。

 樹氷は見られなかったが、冬山はいたるところに日常目にするができない風景が転がっていた。 

森の中では、突然予想もしない光景に出くわすものである。

 辺りが仄かに明るくなったと思うと、林床の真っ白な斜面に、朝の澄んだ斜光が射し込んできた。木々の長々とのびた影が、雪面にストライブ模様を描いていた。

 光輝部と陰影部の明暗の妙が気に入り、冬の光の持ち味ならではのこの光景を、斜線構図の中に写し撮りたかった。 横・縦線の空間は安定感があるが、斜線の空間は、見るからに動きをあらわしていると、一人で悦になっていた。

 頂上付近の樹氷には出会えたが、肝心の7~9合目辺りのブナ林の樹氷の回廊を潜ることができなかった。いつの日にか、その機会を楽しみしている。

 因みに、出向いた2月19日は「雨水の日」と呼ばれている日だ。

この日は、晴天であったのでよかったと言われるようだが、晴れとか雨とかの意味ではなく、 雪から雨に変わり、温かくなってきたとの意味である。だから、この日以降の山行は、樹氷の観賞に遅すぎのよう。気を付けなければ・・・・。

 3人で熱い麺を食べて、一緒に下山した。

雨乞岳をバックに発達した樹氷

氷の華が咲き誇る木々

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