2017年05月01日

監視社会への危険な道

しがNPOセンター

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• 近江八幡市

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      しがNPOセンター 代表理事
                   阿部圭宏

 政府が本国会で成立させようとしている「共謀罪」法案。これまで三度、国会に上程され、三度とも廃案になったいわくつきの法案である。審議の過程で、法務大臣、副大臣、政務官だけでなく、参考人たる刑事局長を含めて、国民の不安を払拭するような答弁をしていない。「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正を行わないと、東京オリンピックが開催できないとか、国内法を整備しないと国際組織犯罪防止条約が締結できないと、政府が主張している。少なくとも、国際組織犯罪防止条約も、今回のテロ等準備罪もテロ対策を主目的とはしていなくて、法案の名称がミスリードだとも言われている。

 共謀罪の怖いところは、懲役4年以上の多くの犯罪について、犯罪遂行の合意(共謀又は計画)そのものを処罰するもので、具体的な危険性が何ら存在しない段階の合意の成立だけで犯罪が成立してしまうことだ。しかも、その成立要件が極めて曖昧なため、捜査機関の恣意的な解釈・運用により、思想信条の自由という内心の自由を侵害されるおそれもある。

 もう一つ、気になることがある。これまで普通の団体は対象とならないとされてきたが、首相答弁では「もともと正当な活動を行っていた団体でも、目的が犯罪を実行することに一変したと認められる場合は、組織的犯罪集団に当たり得る」となった。また、副大臣は「一般の人も対象となりうる」と答弁したものの、その後、「一般人は対象とならない」とし、「何らかの嫌疑がある段階で一般の人ではない」と述べた。このように、捜査対象は捜査機関の裁量に委ねられてしまうとも言える。

 実際、共謀罪がない状況でも、すでに警察による人権侵害は多く起こっている。例えば、今年1月に楢葉町の避難解除の様子を見学するため、金を出し合ってレンタカーで現地を訪れた人のうち、3人が白タク行為で埼玉県警に捕まっている。その後、地検は「諸般の事情により」不起訴とした。逮捕されたとの情報は、警察が一方的にマスコミに提供し、マスコミがそのまま垂れ流しているので、不起訴になっても逮捕された人には大きなマイナスになる。

 共謀罪法案が成立すると、市民生活に対する監視が強化されることが予想される。警察はそんなに暇ではないということを言う人もいるが、変に狙いをつけての捜査が行われているのではないかとの市民の不安を増幅することにもなりかねない。また、自首した者には減刑が認められているので、チクリにより共謀等がないのに捕まってしまいかねないという冤罪を生む可能性も多い。

 安保法制のときに、政府は曖昧な答弁に終始し、強行採決で突破してしまった。今回も同様のことが行われようとしている。法律の中身を曖昧にしたままだと、権力者にとっては都合がよいだろう。特定秘密保護法、安保法制、それに続く共謀罪法案によって、民主主義は確実に崩壊する。

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