0.00％と0％ビール何が違うの

　キリンビールが今年４月に発売したビール風味の清涼飲料「フリー」が業務用でも好調だ。世界で初めてアルコール度数0.00％を実現したことで、ドライブの合間にも飲める安心感が需要を刺激。レストランやゴルフ場などから引き合いが殺到している。 「フリー」は麦芽とホップを原料とする麦汁を使ったビールテイスト飲料。（2009年6月5日　日本経済新聞抜粋）

　キリンビールの「フリー」に続き同業他社が追随して9月の初めからアサヒの「ポイントゼロ」サントリーの「サントリーファインゼロ」サッポロビールの「サッポロスーパークリア」が次々と発売され、店頭に競い合って並べられています。

これらのノンアルコール飲料のほとんどは、発酵させてアルコール入りのお酒を作った後に、アルコール分を熱で飛ばしたり、発酵させている最中にアルコール濃度を低く抑えたりして作られています。

　ところで、ノンアルコールであるので０％の表示で十分なのに、ゼロを３ツも並べて嬉しそうに０．００％と書かれていると思いませんか…。

　一般にゼロ は数量が空っぽであることを意味する数です。つまり、「空」のもとの言葉は「ｼｭｰﾆﾔ」と言い、「中がうつろである」「中身が欠けている」といった意味があります。このｼｭｰﾆﾔは、ゼロであり、何もない事です。もっと言うと、ゼロは、仏教の基本的でもっとも重要な概念であり、「空」を理解すれば、仏教の教理はほとんど理解できたとすらいわれてきたものです。この概念から、数学史上最大の発明の一つである「ゼロ」がうまれてきたのです。

　例えば、みかんが０個と言えばみかんは「ない」がないことを意味します。みかん３個に０個のみかんを足すと３個なのです。（a+0=a)

言い換えれば、アルコール０％と言えばアルコール成分はないことを意味するはずなのですが…。

だが、本当は何も無いのですが、不思議なことに確認すると何かあるのです。

　アルコール成分を分析するのに、精度の悪い分析機器で測定をすると成分が０％になったが、精度が良い分析器にかければ、アルコール成分が検出されてくることがあります。つまり、分析結果を表現する場合、その有効桁数が重要になってくるのです。

　具体的に０％と言いますと、有効桁数下１桁目まで分析して０．５未満であれば、０％と表現します。仮に０・５％含有していれば、四捨五入して１％になってしまうのです。メーカーが０％を表示するには、アルコール成分を０．５％未満にする努力が必要になります。言い換えれば、０％ということは、もしかしたら０．５未満のアルコールが含まれているかもしれないのです。　

従いまして、０．００％ということは、下３桁まで分析して下２桁目が０％であることを保証しているのです。

つまり、計測値を表す場合

Ｘ≒０と書くと、 ｜Ｘ｜＜0.5　　 下１桁目は０ではない

Ｘ≒0.0と書くと、　｜Ｘ｜＜0.05　　下１桁目は必ず０　

Ｘ≒0.00と書くと、 ｜Ｘ｜＜0.005 　下２桁目も０

　ゼロは空であり、いくら０を並べてもゼロに違いがないのですが、計測値としては、０％と０．００％では大違いなのです。

　このゼロが３つも並ぶごたごたした話をしたかと言いますと、2002年道路交通法改正で、 飲酒運転、飲酒事故に対して厳罰化が科せられるようになり、各社がノンアルコールとして新商品を販売し、一気に拡大しました。しかしながら、アルコールが0.1～0.5%未満と微量ながら含まれていたため、「飲んだ後運転して、本当に大丈夫なのか」という不安の声も高く、市場は縮小傾向になったのです。

　これを突破したのが、キリンビールの清涼飲料「フリー」の０．００％でした。ここまでくると、飲酒運転にならなくなる水準になるのです。その結果、ビール風味の発泡飲料として爆発的に売れ出したのです。

　そもそも、同類のノンアルコール飲料（焼酎等の割り材）としてホッピーがありました。1948年に麦酒様清涼飲料水として発売され「懐かしの味」「昭和の味」などといった情緒的な味のするビールの代用品です。「焼酎割飲料」として下町の大衆居酒屋では定番の飲み物で、昔爆発的に売れたものです。テレビ番組のひとつに「BS-i」の「酒場放浪記」で知られている酒場詩人吉田類が焼酎をホッピーで割って「うまそう」に愛飲しています。いつも「うまそう」と思ってTVを観ています。

　発売時に試飲したキリンビール「フリー」は、喉越しがビール飲んでるって感じでしたが、残念ながら、写真のアサヒの「ポイントゼロ」の味は、もうひとつでした。現在、一通り各メーカーを飲んで味比べをしています。