地方創生に未来はあるか
しがNPOセンター 代表理事
阿部圭宏
地方分権が緒について十数年になるが、果たして分権型社会は達成しつつあるのか。霞が関ではすでに分権は死語となりつつ、中央集権型社会が連綿と続く構図ができあがっている。あれほど賑やかだった地域主権という言葉も今は聞くことがない。そうした中で出てきたのが地方創生である。その理念や推進組織である「まち・ひと・しごと創生本部」という名前からも何をしたいのか、何をめざすのかという点では、これまでになく分かりやすい政策と言えるかもしれない。
中央主導で地方創生が進められることには、筆者自身しっくりこないという感想を抱くが、このまま放っておくと、危機に気づかない自治体はどんどん落ちこぼれていき、結局気づいた時点ではすでに手遅れになってしまうのではないかという懸念も理解できなくはない。
地方創生という言葉だけを聞くと、これまでのように国の動きに対し、地方はどのように乗っていくのか、どれだけ金を引っ張ってこられるのかという視点だけが議論されてしまうところだが、今回は違う面もある。それは、日本創生会議(増田寛也座長)が予測した「2040年までに896の自治体が消滅する」という増田レポートが、社会に与えたインパクトの大きさだ。消滅自治体という言葉そのものに加え、名指しされた自治体を含め社会に与えたショックは相当のもので、真剣に取り組まねばならないという切迫感が出てきているようにも思われる。
とはいうものの、官邸のホームページをのぞいてみると、補正予算や新年度予算に計上されている「まち・ひと・しごと創生総合戦略における政策パッケージ」には、これまでのような省庁割拠制に基づく事業が羅列されている。また、都道府県や市町村の総合戦略づくりのための経費として、1都道府県2,000万円、1市町村1,000万円の交付金が用意されていることに加え、相当なお金が交付金として地方に流れる。
至れり尽くせりの大盤振る舞いをうまく活用して地方創生を成し遂げるのか、まさに自治体とっては正念場である。こうした金が地方へ流れるという構図は、戦略づくりに関わるコンサルや交付金事業に関わる事業者だけが得をして、地域には何も残らないという結果も最悪考えられるシナリオである。市民も含めた真剣な議論や取組みを自治体に期待したい。
付け加えると、日本の人口減少シナリオを既定のものとすれば、地方創生戦略が成功しても人口減少は続くので、縮小時代に向けた撤退シナリオもあわせて検討することが必要だろう。
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