行政の透明性
しがNPOセンター 代表理事
阿部圭宏
連日の森友問題報道は収まる気配がない。先月のコラムで「手のひら返し」として取り上げたことが、火に油を注いだ状態になっているとも言える。その後、防衛大臣の虚偽答弁、首相からの寄付金、証人喚問、理事長と総理夫人付きとの手紙やファックスのやり取り、偽証による告訴発言、大阪府市による調査など、何かサスペンス映画を見ているような流れになっていて、果たしてこの後どうなっていくのか、目が離せないところだ。
と言っても、そもそも、この問題の本質は、国有地売却に何か不正があったのではないかということと、小学校設立認可がなぜスムーズに行われてきたかという2点である。本来、認可と土地売却は別物であるし、学園側に資金が潤沢にあれば、表沙汰にならずに、小学校もできていた可能性が高い。そのまま小学校ができていれば、より大きな問題を残すことになっただろうと思うと、ここで止まったのはよかったとも言える。
今回の問題の発端は、豊中市議の情報公開請求に対する近畿財務局の不開示決定が、何か不正があるのではないかという疑問を抱かせることになった。そして、そこに見えたものは、結果として、寄ってたかって学園に小学校を開設させたかったのではないかという考えられない行政の対応である。
財務省や国土交通省の官僚の国会答弁を見ていると、この場が収まれば構わないという答弁に終始している。書類は破棄したが何ら問題ないとか、ゴミの積算根拠も曖昧なまま正当性を主張するなど、悲しいかなその姿はとても難関な試験を突破してきたキャリア官僚の姿には見えない。国家公務員法第96条では、「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」とされており、「由らしむべし知らしむべからず」という態度で、自分の出世だけを願っての行動では、国民をバカにした態度と言わざるを得ない。
もう一つ、非常に気になるのが大阪府のことである。この問題の震源地は大阪である。維新旋風に乗って、今、大阪府や大阪市で進められている規制緩和や民営化の実態を如実に示している事例と言えよう。本来、少子化の時代に学園側の要望に応えて、義務教育の場に参入規制緩和を行うという政策自体が問われるべきだと思う。実際、学園の教育方針、虐待などはすでに府側は知る立場にあり、資金計画にも無理があり、そもそも借地に校舎を建ててはいけないという府の設置基準にも抵触していた。普通、こんな無理筋が通るはずがない。行政内部でどのような意思が働いたのか、説明責任は行政側にある。
国民のモヤモヤ感は、こうした行政の隠蔽体質に起因している。公文書の保存管理と同時に、打ち合わせ記録や交渉記録などの意思形成過程の情報もしっかりと保存管理をして公開していくという姿勢がなければ、政府や自治体への信頼は高まらず、不信感だけが増幅していくことになる。
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