行政は変わるべきか?
しがNPOセンター 代表理事
阿部圭宏
行政のよさは何か。自治体職員の研修で、行政のよい点や悪い点を出してもらい議論するグループワークを行うと、職員からは、よい点として、法に基づき行動、平等、公平公正、安心感、公共の福祉などが挙げられる。法に基づき行動するとか安心感という点は、まさに行政が存在する理由であり、行政批判は多々あるものの、行政に対する信頼性を形作っている根幹だと思われる。逆に、悪い点を挙げてもらうと、縦割り、前例踏襲、官僚的などの言葉が出てくる。しかも意外なことに、議論が特にその悪い点を中心に行われることが多い。これは、職員にも行政の持っている安定性を別の面で見た場合に、問題があることが分かっていると言える。
こうした行政の特徴を総合的に表すものとして「行政文化」という言葉がある。文化は一般的によい意味で使われるが、行政文化は、行政の体質、行政の風土といった意味を持ち、行政という言葉が付くことで悪いイメージで認識されることが多い。例えば、縦割りは、行政機構の高度化により、行政事務を効率化するために組織を分割しそこに権限を持たせてきたもので、本来プラスの面を持っているが、業務が細分化されることで、結果的に市民がどこの課に話をすればよいのか分からなったり、そもそも担当課が決まっていなかったりして、縦割りは市民にとってよくないものと評価される。
では、行政は変わるべきか。首長が替わる度にすべてが変わってしまうことになれば、行政が持つ安心感、安定性が損なわれる恐れがあるので、単純に変わることが必ずしもよいとは限らない。実際、行財政改革が政府や自治体で取り組まれているが、行政文化まで変えようとする取り組みはほとんど見たことがない。だからと言って、行政文化と呼ばれる体質を変えなくてもよいと言っているのではない。行政を変えようとする努力は必要である。
例えば、市民との協働を進めようとすれば、行政側の都合だけではできないわけで、市民に胸襟を開いていく姿勢が求められる。一気に変えるということは難しく問題も多いので、少なくとも行政職員一人ひとりが行政の抱える問題を認識し、変えていこうとする意思を持つことから始めることが必要である。あわせて、市民の行政へのチェックという視点が必要である。
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