人権の尊重
しがNPOセンター 代表理事
阿部圭宏
日本国憲法には、3大原理というものがある。「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つである。現在に照らして見れば、いずれも確固たる地位を保っているかいささか心許ないが、今回、取り上げたいのは基本的人権である。
憲法第11条では、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」と規定されている。具体的には、憲法第13条の生命、自由及び幸福追求権、第25条の生存権などが具体的に国民の権利として規定されている。これを読む限り、わが国では基本的人権は守られているのだと思ってしまう。
ところが、人権侵害は、いたる所で行われているのが現状だ。高齢者や障害者への差別、学校におけるいじめ、職場でのパワララ・セクハラ、ヘイトスピーチ、家庭でのDV・児童虐待、出身地や宗教による差別など、数え上げればきりがないほど多くの人権侵害がある。最近は、インターネットの匿名性を利用した悪質な人権侵害が起こっている。改めて、個人の尊厳に思いを致し、一人ひとりが真剣に人権というものに向き合っていくことが大切である。
こうした私人間の人権侵害に加え、公権力による人権侵害も起こっている。沖縄高江での大阪府警の機動隊員による「土人」発言である。福沢諭吉の『文明論之概略』では、世界を文明、半開、野蛮の3つに分け、「欧羅巴(ヨーロッパ)の教化師が東洋諸島及び其他野蛮の地方に来て、其土人を改宗せしめたるの例は古来少しとせず。然るに今日に至るまで土人は依然たる旧の土人にて、其文明の有様固より欧羅巴に比較す可らず」などど、「土人」という言葉を使っている。明治時代には許されていたのかもしれないが、今の時代にこれを読むと、明らかに差別的な表現だ。今では、ほとんど使われない言葉だし、このような言葉を使う人がいるのを見て、とても驚いたのが率直な感想だ。
では、人権侵害にはどう対処すればよいのだろうか。人権侵害は、人権擁護機関への申出により、対応してくれることになっている。こうした仕組みがあることで、人権が守られる面もある。しかも、公権力による人権侵害と私人間の人権侵害とともに対応してくれるとのことである。しかし、そもそも公権力による人権侵害などあってはならないのである。権力側にいる者は、特に人権擁護に努めなければならない。憲法第99条には、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と書いてある。
公権力による人権侵害が起こるということは、権力側の人間が日本国憲法など守る必要がないと考えているのではないかと思ってしまう。
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