雪解けの「根開け」の赤坂山
2018年04月12日

雪解けの「根開け」の赤坂山

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nonio

• 野洲市

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 寒かった今年も3月中ごろになると雪の季節も終わり、比良山系の雪化粧もなくなってきた。日毎に気温が上がってきた頃を見計らかい、いつもの気の合う仲間と滋賀・福井の県境に位置する赤坂山(824m)に出向いた。

 この山の取り付きは、あまりにも急な丸太の階段から始まり、いつ来ても”うんざり”させられる。東屋が設けられた武奈の木平辺りまだ登っていくと、思いのほか雪が深くなった。 だが、赤坂山頂上近辺では、積雪してなかった。北西の季節風が異常に強いところだ。

 下山は、彼方に鈍く姿を現した大谷山を見定め、寒風を経由してマキノ高原へと足を延ばした。稜線歩きは、地肌がみえ、剥きだしの灌木の中を歩むのが実にいい。雪をかぶった小枝が、少しの振動で跳ね上がったことで、春の到来を告げていた。

欲を言えば、淡い緑の芽吹きが始まるともっとよかった。

 先のトレースが曖昧な銀世界をさまようのは、嬉々として楽しいものだった。

残雪のブナ林

赤坂山頂上にて

寒風への稜線1

寒風への稜線2

日付     : 2018年03月15日(木)

 行先     : 赤坂山(標高823.6m)から寒風

 タイムコース: マキノ高原駐車場8:35 武奈の木平10:00 栗柄越11:30 

           赤坂山11:50  鉄塔手前(昼食) 栗柄越12:50 寒風14:40 

           マキノ高原駐車場15:10

 人数     :5名

 春先の森林帯は、雪が辺り構わず均一に解けていくと思われるが、そうではない。立ち木のまわりの雪がいちはやく解ける奇妙な光景が出現していた。

 残雪の森林帯の至る所の樹々の周りにドーナツ状に丸い窪地が現れる。それぞれの樹々の周りの雪が大きく解け出し、いずれ隣り合った根回り穴は消え、地肌となって行くのだ。この時期にしか見られない春の美しい一景である。

 雪国では、この様子を「根開き」あるいは「根明け」、などと言っている。季語にもなっているようだ。

 なんで、こんな現象が起こるのとの疑問が・・・・。

枯れた木の周りや、立札にも穴が生じるので、樹木自身が発熱しているという訳でもなさそう。 木が吸い上げる地下水が外気より暖かいため、早く雪が解けるのだとか。よく分からない。

 自然現象の不思議は、興味が尽きない。

 あちこちの深さ1mほどの根回り穴を眺めていると、「これな~に」と仲間の女性が指さした。よく眺めると芸術品に思えた・・・。

森林帯の樹々の周りに点々とドーナツ状の根周り穴

 武奈ノ木平のあずまやで小休止の後、しばらく進み、砂防堰堤を過ぎたあたりから急登を登りきると、トレースも定まらないなだらかな雪田帯となった。

 この赤坂山の南尾根の標高760mの地点は粟柄越(あわがらごえ)と呼ばれた、近江と若狭の国境(江若国境)を結ぶ道の峠である。

ところどころに石畳の古道があるところだが、すっかり雪に埋まっていた。ただ、約2.5mの自然石をくり抜いた石仏は、雪も被らずにょきと突っ立っていた。

 この仏像は、三面の顔を持った、馬頭観音ではないかと言われている。豪雪と北風の厳しい峠越えをしていた馬の安全を守る仏として祀られたようだ。今では登山路となっているが、この道は、大正時代に"粟柄村"が廃村になるまで、利用されていた。

 赤坂山と折戸谷の古びた標識が妙に気になった。

下っていく折戸谷を眺めながら、"粟柄村"に住む主人公の少女が、三味線や琴の糸取り仕事で、粟柄峠を越えて滋賀県にやってくる水上勉の小説『湖の琴』の一節が思い出された。

 峠は文字の通り山を上り下りする単なる通過点に過ぎないが、峠には様々な営みがあり、雪解けの峠は、一層思いを巡らさせるものだ。 

 この一帯は寒地性の植物が生育しており春には色んな花が咲くが、まだ寒いのか、見かけた花は、「マンサク「」だけだった。

出合った花マンサク

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