東京オリンピックの気持ち悪さ 2018/09/01
しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
東京オリンピックは本当に必要なものだろうか。スポーツ選手が日頃鍛錬した技や力を披露し、競い合うというスポーツ本来の目的を否定するものではないし、せっかく開催するのだから成功してほしいと思うのは当然だということを前提にした上での話だ。
1984年のロサンゼルスオリンピックが商業化への転機になったと言われ、放映権料の高騰など、回を重ねるごとにオリンピック開催経費は膨らむとともに、ビジネス色に染まっている。
東京オリンピックは、招致のときから開催準備に至る現在までさまざまな問題をはらんでいる。まず、招致活動の不透明さが挙げられるだろう。海外メディアでの招致活動の不正疑惑が報道され、招致委員会は疑惑の否定はしたものの、多額のコンサル料を支払ったことは認めていた。コンサルが介在し、招致そのものが金にまみれる姿は、スポーツの持つフェアプレー精神とは相入れないのではないか。しかも、首相の「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。……」(官邸ホームページから)という招致演説、特に英語での「アンダーコントロール」という言葉には、多くの人が疑問を持ったことだろう。復興五輪と銘打っても、実際の福島原発被害を受けた方々の苦しみは、今も続いているからだ。
もう一つが、一連の予算の膨張である。当初、新国立競技場で採用された設計での建築コストの増大による設計案の見直しが行われたが、結局、1500億円という莫大が費用が必要となっている。開催経費そのものの増大も指摘されている。しかも、オリンピック需要による建築資機材の高騰は、一種の建設バブルという状態とも言える。公式エンブレムが盗用と指摘され、取り下げられた問題もある。
最近、特に話題となっているのが、ボランティアとサマータイム導入である。
ボランティアは、これだけ商業化されたイベントで、しかも膨大な運営経費が動く中、無償で働くボランティアをなぜ大量と必要するのかが問われている。「東京2020大会ボランティア」というサイトを見ると、80,000人もボランティア募集がされいて、1日8時間、10日以上が基本だと書かれている。実際に、学生ボランティアを確保するために、スポーツ庁と文部科学省は7月26日、全国の大学と高等専門学校に東京五輪・パラリンピックの日程に配慮して2020年の授業スケジュールを作成するよう求める通知を出した。大会に重ならないよう、授業や試験日程を繰り上げたりしろとのことのようだ。これまで、大学では文部科学省から授業時間を確保するよう求められてきていることから、今回の通知がご都合主義との批判も指摘されている。
少なくとも、80,000人に報酬を支払えば、それは景気対策にもなるし、手を挙げる人も出てくるだろう。だが、今年の夏のような酷暑の場合は話が別だ。日中炎天下での活動は、命に関わる重大な問題であるからだ。
では、なぜ、こんな時期にオリンピックを開催するのか。世界的にスポーツイベントの予定があまりない閑散期に組み込まれるよう意図されているという指摘もある。いずれにしても、人の命よりすべてが金で動くのが今のオリンピックの姿だ。
こうした根本的な問題に蓋をしたまま、突然出てきたのがサマータイムの導入である。オリンピックのためにサマータイムを導入するなど言語道断である。これまでの仕組みを変えてまでも開催しなければならない理由があるのか。
最初にも書いたが、オリンピック候補選手が自己研鑽を積みながら、代表を目指すとのは尊いことだと思うが、今のオリンピックをこのまま強引に推し進めようとすることには多くの疑問がある。酷暑でオリンピックに関わる人が死んだらどうするのか。ボランティアが熱中症にかかったら、その補償はどうするのか。サマータイム導入の混乱をどう整理するのか。
と、ここまで書いて、今の日本の空気から、体制に逆らう者、自分の意見を述べる者、動員的な動きを批判する者などへの排除の動きが出てきて、翼賛的な言説が飛び交うことが実は一番怖い。
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