働き方改革の欺瞞 2018/03/05
2018年03月05日

働き方改革の欺瞞 2018/03/05

しがNPOセンター

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• 近江八幡市

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                     代表理事 阿部 圭宏

 政府が今国会の目玉と位置付けた「働き改革」が迷走している。まだ法案が出ていない段階だが、8本の法律案を一括提案しようという話になっている。この中には、同一労働同一賃金や労働時間の上限規制のように労働者側が求めているものと、高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の拡大を内容とする経営側が求めているものとが一体となっている。

 このうち、裁量労働制については、首相が衆議院予算委員会で「労働時間等総合実態調査」を根拠に「裁量労働制のほうが一般労働者より労働時間が短いというデータもある」とした答弁をしたが、その後答弁が撤回され、現時点で裁量労働制の対象を拡大する部分を法案から削除するという方向になっている。

 一方、高度プロフェッショナル制度は、依然として法案の中身に入ったままである。高度プロフェッショナル制度は、かつてホワイトカラーイグゼンプションとして問題になったもので、専門職で年収の高い人を労働時間の規制の対象から外す新たな仕組みである。平均年収の3倍以上で、現時点で年収1075万円以上が対象になるとされている。深夜・休日労働をしても割増賃金が一切支払われなくなることで、長時間労働や過労死が問題となる中で、裁量労働制以上の究極の「残業ゼロ」法案とも言われている。

 そもそも労働法制は、資本主義の中で、経営者と労働者の不均衡な関係を是正することで、労働者保護を図るための仕組みとして整えられてきた。派遣労働の規制緩和が非正規雇用を広げてきた実態から考えても、労働法制の規制緩和は、労働環境の悪化を招くことは確実である。

 今回、経済界が裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度の導入を目論む目的は、実質的な労働強化と賃金抑制である。労働生産性の低さを実労働時間を隠すことで高く見せようとするものという見方もできる。

 さまざまな分野での技術革新が行われることから考えると、労働時間はもっと短くしていく必要がある。豊かな生活を送る上でも、労働時間の短縮は喫緊の課題であり、それを実現することがまさに働き方改革と言えよう。政府の裁量労働制拡大の断念を受けての経団連会長、経済同友会代表幹事、日本商工会議所会頭の「残念」「遺憾」というコメントことが遺憾である。この人たちは、人の命をどのように考えているのだろうか。経済界は目先の利益にとらわれることなく、労働者を大切に考えていかないと、ますますこの国は置いてきぼりにされてしまうだろう。


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