5月連休の燕山
2008年05月15日

5月連休の燕山

N

nonio

• 野洲市

詳細


日程: 2008年5月4日〜6日

コースタイム:

5月4日 有明荘宿泊

5月5日 登山口 5:50出発 第一ベンチ 6:40

     第二ベンチ 7:10 第三ベンチ 8:10 富士見ベンチ9:10

合戦小屋10:00 燕山荘12:00 燕山荘宿泊

5月6日 燕山荘6:30出発 燕山頂上7:10 燕山荘着 8:10

     燕山荘9:00 出発合戦小屋 9:45〜10:00    

 登山口 12:30 ベンチ9:10 合戦小屋10:00 燕山荘12:00


  山行きの友達S女史から、「5月の燕岳に行かないか」との誘いがあった。
 燕岳は、初心者でも行ける北アルプスを代表するコースである。
昔、私も何回も訪れたことがあっ た。しかし、5月の連休の北アルプスは、厳冬期より、むしろ雪 が深く、それなりの覚悟が必要である。  5月4日は、絶好の好天気に見舞われた。自動車の車窓から、ぼんやりと真っ白な北アルプスを眺めていた。常念岳の猛々しい姿は、何十年も経っていたがすぐに山容から分かった。  



  森林特有の清清しい香りに混じって硫黄の臭いがした。
 この臭が引き金となって、何十年も前の若かった頃の私の姿が、脳裏にはっきりと甦ってきた。

                       北アルプスの遠望

 真夏のある日、合戦小屋で名物のスイカを選ぶところを、余りにも喉が乾いてしまったのでビールを飲んでしまい、ばかばかしいが完全に酔っ払ってダウン。またある時、大天井から槍が岳に向かう東鎌尾根で、脱水状態に陥った。槍ケで岳山荘2ℓポリ水筒を一挙に飲み干し、更に飲み続け、体の隅々まで水が行き渡りよみがえったこともあった。嫌な出来事もあった。人生で最も落ち込み、自暴自棄になって、冬化粧をしはじめていた燕山荘から槍が岳に向かった。途中、ガスで視界がゼロとなり、着いたところが常念小屋となってしまった。あれや、これやの若かった頃の思い出が走馬灯のように駆け巡った。

 このコースは、第一ベンチから始まり第二・第三・富士見、合戦小屋、合戦の頭にベンチがあり、 登山者は、これを目印に、登っている。しかし、殆ど雪に埋もれてしまっていた。 樹高が段々と低くなり、樹林に隙間が出てきた。

 左前方に燕岳から大天井岳へ連なる白い主稜線の一部が見えてきたが、雲に覆われ、有明山(標高2268m)は、ますます黒々となり不気味になってきた。この日は、日本海中部と九州の南には前線を伴った低気圧があり、天候が悪化するとの予報であった。


          燕岳から大天井岳へ連なる白い主稜線  


             黒々とした有明山(標高2268m)

  合戦小屋は、屋根まですっかり雪に埋もれ、入口のみ雪掻きをして営業をしていた。温かいコーヒで一息ついて早々に出発した。合戦の頭(標高2489m)から森林限界となり、完全に雪の世界に突入した。

 丁度、低気圧前線が、通過する時に重なり、ガスが辺りを覆いつくし、空と尾根の稜線の 区別がつかない。その上、強風が山腹を容赦なく叩きつけてくる。 ルートは、冬季の尾根通しに付けられた微かに見える赤旗を頼りに登っていった。 ところどころ、両側が急に落ち込んでいるリッジもあり、踏み外すと取り返しがつかなくなるので、慎重に進んだ。 前人の歩調に合わせて一歩ずつ規則正しく前に足を運び出すことだけ考えていた。 この悪状態を一刻も早く脱することを祈るだけである。 かすかに燕山荘が、見えてきた。近いようで遠くもどかしい。最後の詰めは、右から巻いていたと記憶していたが、大きく左に巻いて燕山荘に飛び込んだ。合戦小屋から、約1.7kmを2時間かかった。

 猛烈に吹き荒れた寒い世界からガラス戸一枚に隔てられた内側は、穏やかで、静かな別世界となった。板間に「どかっと」腰をおろした。 凍りついたアイゼンを外し、次にスパッツの裏側に付けてあるチャックを開き、登山靴の紐をゆっくりと解いていった。この動作に相当の時間を要した。

 5月6日今まで燕山荘には、何回も厄介になったが、燕岳(標高2763m)山頂には、登ったことは無く眺めるだけであった。 私は、あまり山頂を好まない。むしろ峠・鞍部を大切にしてきた。しかし、今回は、初めて燕山頂上に向かった。

 あれほど荒れた天気が一転して絶好の日和になった。 朝早く出発した。雪道は、昨夜粉雪が降り、全面クラストのためアイゼンを装着した。アイゼンの爪と氷が触れる摩擦音「サア、サア」と言う心地良い音を立てながら登っていった。山頂までの道は、ほとんど西側斜面のトラバースルートがつけられていた。紺碧の空に続く白い雪道は、燕岳に延びている。素晴らしい稜線散歩になった。


                                      紺碧の空に映える燕

 燕岳は、花崗岩と花崗岩砂礫の大きな岩が印象的な山である。頂稜部ではそれらが奇異な形の岩塔があった。雪に埋まって形がはっきりしないが、イルカ岩と思われる奇岩の間から槍ガ岳を撮影した。



              イルカ岩奇岩の間からの槍ガ岳の遠望                                


           燕山直下                    燕山頂上にて                          


 40分程で燕岳山頂(2367m)は到着した 奥北燕の向こうには不動岳〜針ノ 木岳〜蓮華岳〜鹿島槍ヶ岳が見える。


      合戦尾根から燕山岳を望む
 満ち足りた気持ちで踵を返し、 燕山荘から再び重たくなったザックを担ぎ、美しい景色を惜しみながら下山していった。本当に、晴天にして頂いた山の神に感謝した。  
 登りの時、全く気づかなかったダケカンバ(岳樺)が、合戦の頭の付近に点在していた。 白い雪面の中で少し赤茶色かかったダケカンバの幹は青空に映えて、より一層美しかった。風雪に耐えダケカンバは、一株から何本も茎を出し、妖気さえ漂わせていた。雪崩地や荒れ地、寒冷地など他の樹木が生育しづらい環境にあえて育つのであろう。植物のたくましさを感じた。 


                雪中のダケカンバ        

       
                        


                        

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