外国人の人権 2018/07/01
しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
最近、政府が5年間を上限とした日本国内で就労できる新たな在留資格を設ける方針を決めたという報道があった。現在、技能実習で就労する外国人は、最長5年の期間が決められていて、ここを規制緩和し、人手不足に悩む建設や農業、介護などの5分野での労働力確保を図ろうとするものだそうだ。
外国人技能実習制度は、厚生労働省のホームページでは「わが国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力することを目的」としているが、これはあくまで建前で、実態は労働力不足に悩む業種での労働力確保のために行われている。
これまで技能実習に関しては、受け入れ企業が有利な雇用関係となることによる長時間労働や残業代の不払い、実習生が失踪するケースが相次ぐなどの問題が起こっており、批判を浴びてきたため、技能実習法を定め、昨年11月から施行するなど、規制強化を行ってきた。しかし、この3月には、技能実習生として来日したベトナム人男性が東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染作業に従事していたとの新聞報道もあり、技能実習のいい加減さが改めて問われている。
こうした中での新たな在留資格では、技能実習修了者のほか、所管省庁が定める技能評価試験合格者を対象としており、家族の帯同は認めないとされている。日本では、外国人労働はあくまで労働力の確保であり、外国人の人権や生活という配慮は一切なされていないことに、今更ながら驚かされる。
人権という面で見逃してならないのが、日本の難民認定の低さだ。難民条約を厳格に解釈し、「狭義の難民」しか保護の対象としてこなかったからと言える。難民認定の実務を担う法務省入国管理局は、難民を取り締まるという視点で動いていると考えてもよいだろう。日本は国際基準と比較すると、難民を決める認定基準や、公平性、透明性を確保した手続きの基準、難民の受け入れ体制などが不十分だと指摘されていて、難民問題に対する日本社会の認知も広がっていない。確かに、「偽造難民」と言われる人たちも一定数はいるだろうが、今のままでの国際的にも理解が得られないだろう。
入国管理局が所管する外国人収容所では、不法滞在などで多くの外国人が収容されているが、その処遇の悪さが指摘されている。病気治療を受けられずに死亡したり、自殺者が相次いでいるにも関わらず、管理責任を問われない姿勢に多くの批判が集まっている。
技術実習にしても、入国管理にしても、こうした人権無視の対応は、先進国として非常に恥ずかしい。すべて人間は生まれながらに自由かつ平等で、 幸福を追求する権利を持つという天賦人権説を世界標準として考えると、日本は後進国である。と言っても、天賦人権説など、チャンチャラおかしいと宣う自民党議員には到底理解していただけないだろうが。
不適切な内容や規約違反を発見した場合はご報告ください