西日本豪雨災害から 2018/08/01
2018年08月01日

西日本豪雨災害から 2018/08/01

しがNPOセンター

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• 近江八幡市

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                     代表理事 阿部 圭宏

 「平成30年7月豪雨」と命名された災害は、西日本を中心に多くの被害を出している。災害救助法が適用された自治体は104(2018年7月25日現在)となり、政府は激甚災害の指定を行っている。最近の災害は、地震、噴火、豪雨、竜巻、積雪など多岐に渡るとともに、復興に至らないまま、次々と新しい災害が積み重なってきている。今回の豪雨の1月前には大阪北部地震が発生し、滋賀でも米原市での竜巻発生による家屋被害が起こっている。

 こうした災害が発生すると、多くの被災自治体でボランティアセンターが開設される。地域防災計画では、社会福祉協議会が担うことがほとんどであるが、実際に社会福祉協議会だけでの運営が難しかったり、ノウハウがない場合があったりするので、災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P) や全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD) などが協力しながら運営されることが多い。

 ボランティアが今や被災された個々の人のニーズに応えて活動することは一般的になっているし、例えば、重機を持ち込んで活動する人たちや、壊れた屋根にブルーシートをかけるという危険と隣り合わせの活動をする人たちもいる。

 では、ボランティアがどこまですればよいのか? あるいは、ボランティアにどこまでお願いしてよいのか? 場合によっては、ボランティアが来てさえくれれば、すべてが解決すると考えられているようにも思われる。

 政府の役割は、「国民の生命と財産を守る」ことだとされるが、実際の対応となると、実は現実とかなりの乖離がある。災害初動としては、生命を守るという観点から人命救助が最優先され、警察、消防、自衛隊などが捜索等に投入されるので、一義的には生命を守るという点では、政府は優先的に動くということが分かるが、では、財産を守るということはどういうことなのだろうか。

 河川改修、治水ダムの整備、砂防事業、急傾斜地対策など、日常の公共事業を通じて自然災害からの被害を食い止めようとすることが一般的であるが、整備が進んでいないことも多々あるし、想定を超える状況になると、多大な被害が実際に起きる。今回の豪雨水害でもダムの放流が行われ、下流で被害が出たケースもある。

 河川の氾濫による家屋の浸水、土砂崩れ等による家屋の倒壊などの個々の泥出し等のニーズの多くは、住人や近隣コミュニティ、災害ボランティアなどが対応する。道路の復旧、河川整備、震災ゴミの処分などは行政が行うが、個人の住宅あるいは事業所については、基本的に対応してくれない。そのために、ボランティアセンターがあると言ってもよいくらいだ。ボランティアが足らないという報道があると、行政が対応すればよいではないかとの反論が上がる。心情的には理解できるが、実際の仕組みがそうなっていないことに気付く必要がある。

 阪神淡路大震災をきっかけにできた「被災者生活再建支援法」は、「自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して被災者生活再建支援金を支給」するとなっている。現在は最大で300万円であるが、これをもってなかなか再建が進むはずもなく、基本は個人の資金力や保険対応などでとなる。

 現在の災害対応の建て付けでは、私有財産の保護を行わないという原則のもと、災害支援のさまざまな仕組みができているため、整合性がとれていないという見方もできる。早急な復興への道を築くことが、被災者の日常生活の安定を図る意味でも重要なことから、どうしてもボランティアに頼りがちな仕組みがこれでよいのかをを考えていかないと、今後起こると想定されている南海トラフ大地震には対応できていかない。

 ついでに、最近、話題となっている東京オリンピックのボランティアとの関係で言えば、災害の場合はボランティアがいないと回らない仕組みとなっているのに対し、商業ベースでのオリンピックは、なぜ、ボランティアが必要かをしっかりと説明できていないし、単なるタダ働き、金儲けの道具だとしか考えていないようにも思えて、同列に語られることに違和感を感じるのだ。


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