これからの地域自治のあり方を考える
しがNPOセンター 代表理事
阿部圭宏
今年も熊本地震をはじめ、台風10号と災害による被害が続いている。この国は、地震、台風、火山噴火、水害などの自然災害とは切り離せない。一旦、災害が起こると、災害ボランティアセンターが立ち上がり、ボランティアやNPOが活躍するという仕組みは定着している。
その意味では、災害ボランティア抜きに復興に向かうのは難しくなってきているのは事実だが、こうした状況に悪乗りして、何でも災害ボランティアに頼む自治体が出てきているという話を運営者側の人から聞いたことがある。確かに、災害時であるので、行政にとっては予算がなく、人材も確保できない事情もあるだろう。だが、行政責任を市民に押し付けている面はぬぐいがたい事実であり、市民と行政の対話や連携が求められる局面である。
2000年代から始まり、全国に広がっている地域自治組織についても同じ構図が見える。自治体の合併が行われたり、財政危機が叫ばれる中で、小さな自治やコミュニティの再生を進める方策として、多くは自治体が呼びかけ設立されてきた。自治会などの既存の各種組織をベースに組織化し、地域課題を解決してもらおうとするものである。まちづくり協会、住民自治協議会などの名前で呼ばれるこうした組織は、それぞれが工夫をしながら、さまざまな活動を行っている。活動面だけ見ると、いかにも頑張っているように見えるが、自治という面で見ると、とても自治を行っていると呼ぶには心もとない。
というのも、自治は自分の責任で自己決定するということから、本来、地域自治組織に対しては、自治体からの権限と財源の移譲が行われるべきはずのものである。しかし、実際は権限も財源も移譲されず、しかも、行政からは何をすべきかの目標も示されず、雀の涙ほどの交付金や補助金によって運営されているのが実状である。
設立から10年以上経つ組織も出てくる中で、この構図は基本的に変わっていない。地域住民には、自治を担っているのだという自負や気概も生まれず、複雑に浮かび上がってくる地域課題に真摯に向き合えない状況が生まれているように思える。これらすべてが住民の責任ではない。これからの地域自治を考える上で、行政側がもう一度原点に立ち返り、行政責任による仕組みづくりに取り組まない限り、この仕組みはやがて形骸化する。
分権時代になっているにもかかわらず、自治体職員にそうした気概がないのが非常に気になる。このままでは、自治体も地域自治組織もNPOも、国の意向にからめとられてしまうのでないかと危惧する。
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