2025年11月09日
季節を織りなす、我が庭のトンボたち
我が家の庭に、一本の枯れ木がある。思い入れがあって今なお残してあった。
盛夏の午後、珍しくシオカラトンボが飛来してきた。どうしようもなく暑かったのか、夕方まで長々と枯れ木に翅を休めていた。
その翅は照りつける陽射しの重みに耐えかねているようだった。そして、風景の一部になろうとしているかのように翅を一段と下げていた。窓越しに見守りながら、動くことさえ許されない、そんな真夏の仕打ちを感じていた。
やがて長い長い茹だるような暑さが和らぎ、季節は、気づかぬうちに短くなった秋へと歩みを進めた。
赤とんぼが現れたのは、そんなある日のこと。同じ枯れ木に翅を休めた。が、あっという間に短い秋を慈しむように、気忙しく空に舞い上がっていった。まるで「今しかない」と知っているかのように、束の間の季節を必死に生きていた。一瞬だけ息を吹き返したような、切ない秋の光景だった。
さて、四季の輪郭が揺らぎはじめている今、二匹のトンボの姿が、その答えをすでに静かに告げているような気がした。
季節は、かつてのように四つの扉を開けることなく、二つの極を行き来するのかもしれない。


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