NPO法施行20周年から考える日本の市民社会 2018/12/01
2018年12月01日

NPO法施行20周年から考える日本の市民社会 2018/12/01

しがNPOセンター

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• 近江八幡市

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 この12月で特定非営利活動促進法(いわゆる「NPO法」)が施行されて20年となった。阪神淡路大震災を機に、ボランティア、市民活動、NPOという言葉がいろんな場面で使用され、特に、NPOという言葉は、NPO法の施行とともに、日本社会に根づいてきたと言えるかもしれない。

 当時の滋賀の状況はどうかと言うと、市民活動やNPOは、理解も含めて、まだそれほど広がっていなかったように思う。しかし、滋賀だけでも、市民活動・NPOに関する勉強会、講演会、フォーラムは数多く開催されてきた。そうした企画にもいくつか関わってきた身からすると、こうした会に参加する人は、何か社会が変わる気がするとか、確実に社会が動いているというワクワク感があったのではないかと思う。

 NPO法の成立には迂用曲折があり、名称も「市民活動促進法案」から「特定非営利活動促進法」へと変わってしまった。ただ、成立時のNPO法第1条では、「この法律は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること等により、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする」と謳われ、「市民」という言葉が条文に入った。

 日本の法律で、「市民」を前面に出した法律は珍しいようで、NPO法の規定に「市民」が明示されることにより、市民活動、市民社会という言葉の持つ意味合い、可能性を広めるのではないかと期待したものだった。現実には、市民活動が特定非営利活動と言い換えられてしまったために、市民活動への理解よりも、特定非営利活動の持つ意味の不明確さが露呈してしまった気もする。法律名の分かりにくさなどを理由としてか、名称を「NPO法」と言う人が増え、特定非営利活動法人もNPO法人と呼ばれることが多くなったことは、NPOへの関心を高めるとともに、NPO法人を数多く輩出する原動力となった。

 市民活動を前面に押し出す力が十分だったかは分からないが、この間のNPOは、市民活動としてさまざな課題に対応すべく、行政や企業では提供されにくいサービスを開発し、社会に提供してきたと言えると思う。NPO法人数は、51,745法人(2018年8月末現在)であるが、これ以外にも市民活動としての公益法人、一般財団法人、一般社団法人、社会福祉法人などの非営利法人や法人格を持たない任意団体を含めると、その数は膨大であり、確実に市民活動層はこの20年で分厚くなった。

 残念ながら、サービス提供とともに、期待をされたアドボカシー(=政策提言)活動は、まだまだうまくいっているとは思えない。社会変革につながるこうしたアドボカシー活動は、引き続きNPOにとっての大きな課題と言えるだろう。

 最近は、ソーシャルビジネス、社会的インパクト評価というものが持てはやされるようになっている。市民活動の一面には、ビジネス的な解決方法もあるし、ロジックモデルと呼ばれるような成果を図る指標が機能する場合もあるだろう。だが、すべてのNPOの活動を市場や社会的インパクト評価に回収することが本当に正しいことなのかを、改めて考えていく必要があるだろう。

 ソーシャルビジネス、社会的インパクト評価とかいう前に、もう一度、市民、市民活動、市民社会に目を向け、こだわっていくことが大切ではないかと思っている。


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