2014年07月04日

今の政治と経済を転換するには

しがNPOセンター

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• 近江八幡市

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           しがNPOセンター 代表理事
                                 阿部圭宏

 しがNPOセンターの「NPO若人エンパワープロジェクト」のキックオフに来ていただいた大阪ボランティア協会の早瀬昇さんが、企業が私的なことを社会に開くことで「公共」を担うという話をされた。具体的事例として示された、社長が趣味で集めたコレクションを公開すれば美術館になる、あるいは、大阪の商人が商売のために架けた町橋を誰でも通行可にすることで公共性を持つという話は、企業という存在の社会的な意味を改めて考えさせられる。

 企業にとって、社会貢献やCSR(社会的責任)というのは今や常識となりつつあるが、一方で、最近の企業を巡る報道に接すると、目を疑いたくなる。法人税の実効税率の引き下げが政治日程にあがったり、残業代ゼロを導入する新たな労働法制の提言など、競争に打ち勝つためには必然だとばかりに正当化されようとしている。企業経営者が政府の委員に入り、公的な発言という体をとりながら、実は自分の企業の利益増大を図る。私的なことを社会に開くという公共性とは真逆の発想と言えるだろう。

 何もこうした問題は、経済界だけのものではない。今の政治状況を見ると、同じような構図が見える。安倍政権が昨年、強行突破した特定秘密保護法や今般、集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことは、社会にその是非を広く問うという姿勢を見せないまま、まさに私的なことのような決定を勝手にしているように見える。

 かつて丸山真男は「人間と政治」という論考の中で、「政治権力の把握者は、昔から被治者に対して、むしろ権力の強制的性格を露骨に出すことを避け、政治的支配に対してさまざまな粉飾を施すことによって、被治者の内面的心理にできるだけ奥深く入り込もうとした」と述べている。権力者は権力を持つが故に、権力行使には慎重になる。権力を持てば持つほど、少数者に理解を示し、多数の横暴を戒めるものだ。歴代の自民党の首相を一つ一つていねいに分析していくと、その傾向がよく表れている。

 数の論理を振りかざし、何でもできると奢っている現政権やそれに尻尾を振っている政治家は、そのうち大きなしっぺ返しを受けるだろう。経済至上主義、成長戦略一辺倒という経済政策も早晩見直しが迫られるに違いない。そのためにも、市民一人一人が新しい政治ビジョン、資本主義に変わる経済ビジョンを議論する必要がある。

 参考文献 丸山真男「政治の世界 他十篇」(岩波文庫)
        広井良典「定常型社会」(岩波新書)
        水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」(集英社新書)

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