公文書改ざん事件から見えた日本の後進性 2018/04/01
しがNPOセンター
代表理事 阿部 圭宏
この1年国会を揺るがしている森友問題で、財務省の公文書改ざんが明らかになった。この間、いろんな論評がなされているが、筆者の昨年3月のコラム「手のひら返し」、同4月のコラム「行政の透明性」で書いたことが、そのまま問題として残っていることが見えた。
1つは、「国民のモヤモヤ感は、こうした行政の隠蔽体質に起因している。公文書の保存管理と同時に、打ち合わせ記録や交渉記録などの意思形成過程の情報もしっかりと保存管理をして公開していくという姿勢がなければ、政府や自治体への信頼は高まらず、不信感だけが増幅していくことになる」という点である。
朝日新聞の報道以来、テレビで連日コメントしている財務省出身者の女性は、「こんな詳しい経過は、決裁文書に残さない。職員の手控えとして持っているもの」という発言を恥ずかしげもなくしている。文書主義を貫く建前の行政が、公文書の一部のみを公文書として取り扱い、その他を私文書として処理すれば、国民による歴史的検証が行えなくなる。公文書管理法では、公文書の一つである行政文書を「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書(図画及び電磁的記録を含む。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているもの)と定義されていることからして、「手控え」などというものの存在を認めること自体が、そもそもおかしいのである。
もう1つが、「トップや上司が責任を明確にし、そこで働く人たちへの思いやりや信頼を持たなければ、当人は阿呆らしくてやっていられなくなる」ということである。
3月27日に行われた証人喚問で、佐川前理財局は「当時の担当理財局長として大変重い責任がある」とは答えたものの、答弁のそのほとんどは刑事訴追を理由とした証言拒否が目立った。政治家などの働きかけは強い口調で否定したものの、改ざんに関わる自分のことは明確にせず、部下に責任を押し付けているかのような答弁もあった。こんな答弁を聞いて、国民の多くが失望したと思われるし、財務省職員もどのような感想を持つのだろう。
1年経っても、森友問題は何も解決していない。これに公文書改ざんが加わったので、本当に怒りを抑えられない人が多いだろう。こんな中、保存期間の特定秘密文書44万件が廃棄されたとの報道があった。公文書管理法では、行政文書としての保存が終了後も歴史的に必要であれば、国立公文書館に歴史公文書として移管されることになっている。
一連の公文書改ざんや廃棄は、日本を近代国家として成り立たせてきた根幹に関わる大きな問題である。国権の最高機関たる国会が行政機関にバカにされていることを多くの国民がもっと怒るべきである。自民党幹部が「佐川氏の勝ち」と言ったという報道には、ひっくり返りそうになった。国会がバカにされていることは、野党よりも与党がまず怒りを表さないといけない問題である。
この国は、民主主義国家、近代国家、先進国などと、もう胸をはって言えないところまで来ていることを改めて一人一人が自覚すべきである。
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