現場感覚
しがNPOセンター 代表理事
阿部圭宏
滋賀県内のNPOの方にインタビューする機会を得た。そこで改めて痛感したのが、市民活動の機動力と現場感覚の大切さだ。「ほっとかれへん」「何とかしたい」という市民の思いは、さまざまな現実の活動に結び付いている。そもそも、市民活動、NPOの多くは、自らの経験、体験を通じて社会的な課題を解決していこうとする態度に重点が置かれる。現場での経験を積み重ねることで、多くのことが見え、新たな課題へのチャレンジも始まる。
こうした活動は試行錯誤を経ながら成長していくものも多い。市民活動のあらゆる分野で、NPOによる新たな取組みが行われている。思いつきのようなものが一線級のサービスになることもある。実際、現場での経験の積み重ねにより、信頼のおけるNPOへとなっていくことは、NPOとしてのロールモデルと呼んでもよいかもしれない。
では、行政はどうだろうか。公共の福祉を担う行政は、非常に幅広い領域を守備範囲としており、組織形態も規模も意思決定方法もNPOと異なる。しかし、行政の組織は部局に分かれ、その分掌する事務を切り口として、課題を解決しようとする点では、NPOとむしろ同質と言えるかもしれない。ただ、政策過程の中でのニーズ把握、課題設定という面ではNPO的な現場志向ではなく、一義的には計画での位置づけで動くことが多く、どちらかと言えば演繹的だ。
行政がもう少し現場に目を向けるようになれば、必ず社会は良くなるだろう。NPOが先駆的な取り組んだ活動を行政が制度化することもある。現場感覚を大切にするNPOの動きを行政が的確に把握するようになれば、新たな動きが生まれるような気がする。
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