日本の農業はどうなるか 2018/10/01
2018年10月01日

日本の農業はどうなるか 2018/10/01

しがNPOセンター

しがNPOセンター

• 近江八幡市

認定特定非営利活動法人 しがNPOセンターです。 滋賀県内の市民活動や地域のまちづくり協議会などの活動を応援しています!

詳細

           しがNPOセンター
                     代表理事 阿部 圭宏

 9月27日夕刊各紙を見ると、一様に日米首脳会議で「日米物品貿易協定(TAG)」の交渉入りで合意したことを伝えている。見出しでは、自動車関税の交渉中の発動なしが前面に出ていて、記事をていねいに読んでいくと、「農産品を含む全ての品目が対象となる。両首脳が交わした共同声明には“日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること”を、米国側が“尊重する”」(朝日新聞)とある。あくまで「尊重する」という言葉だけなので、これまでのように米側に押し切られる可能性が高いのではないかと危惧される。

 聞きなれないTAGという言葉も気になる。TAGは物品の関税交渉に限ったものだが、共同声明には、TAGの協定締結後、段階的に投資やサービスに関する交渉に入ることも明記されたようで、投資やサービスを含めた二国間協定という話になれば、あれほど結ばないとしたFTAとなる可能性も大である。

 仮にTAGが締結されると、一番影響を受けるのは農業であろう。農産品についてTPPで合意した以上の譲歩には応じない、との日本政府の立場があるが、そもそもTPPによる農業の影響も大きいと言われている。TPPで関税がなくなることにより、海外の安い農産物が安いまま日本に入ってくる。その結果、国内シェアが次々に奪われてしまい、日本の農業が衰退するのではないかとされている。

 シェアを奪われると、農家の仕事がなくなり、国内農産物の生産量がさらに減る、さらに海外品のシェアが増えるという負のスパイラルに陥る。食料自給率は、現在でもカロリーベースで40%にもかかわらず、これ以上減ると、もし輸入がストップしたら、食べ物がなくなってしまう。

 農業が置かれている現状は、何もTAGやTPPだけを気にすればよいというものではない。農業人口は確実に減り続けている。農業就業人口は2000年には389万人であったものが2016年には192万人と半減しているし、そのうち、基幹的農業従事者も240万人が158万人に減少している。この間、農業就業者の高齢化も進み、2016年での平均年齢は66.8歳となっている。耕作放棄地の増加も大きな問題と言える。2015年の放棄地面積は、42万3千ヘクタールとなっており、ほぼ滋賀県の面積に匹敵する。

 また、今年だけでも西日本豪雨、台風直撃、北海道胆振東部地震と大災害が起こり、農産物も数多くの被害を受けているし、今後も頻発すると思われる災害への対応という点から農業基盤の整備をどうするのかが問われている。

 こうした悲観的な現状だけを見ていると、農業が日本社会か消えてしまうのではないと心配する人もいるだろう。政治家はアメリカと仲良くすればよい、官僚特に経済産業省は、貿易摩擦がなくなればよい、経済界はこれまでのように自動車産業が牽引するとともに、商社が農作物を輸入さえすればよいという短絡的な価値観でしか動いていないように見える。

 農業に光明を見出すとすれば、若い新規就農者が数多く入ってきているという現実だろう。脱サラで農業を目指す人は、経済的にそれほど豊かでなくても、本人の満足度が高い人が多いという。これまでの価値観とは違う働き方、暮らし方は、金一辺倒に凝りかたまった今の日本のリーダー層へのアンチテーゼとなるだろうし、これからの日本の農業の生き残りにつながるだろう。


不適切な内容や規約違反を発見した場合はご報告ください

この記事を書いた人

しがNPOセンター

しがNPOセンター

1週間前から参加
近江八幡市

認定特定非営利活動法人 しがNPOセンターです。 滋賀県内の市民活動や地域のまちづくり協議会などの活動を応援しています!

ユーザー詳細