巨木トチノキのある夜叉ヶ池
2010年08月15日

巨木トチノキのある夜叉ヶ池

N

nonio

• 野洲市

詳細

日付 2010年7月25日
 山名 夜叉ヶ池
 コースタイム 野洲駅6:10 今庄8:55 登山口9:40 
        夜叉ヶ池11:00~12:30 登山口14:00

 滋賀・福井・岐阜3県にまたがる越美山地に幽玄な池がある。この夜叉ヶ池は、標高1,100mの結構険しい尾根筋にひっそりと水を湛えている。古い時代に、地滑りによって窪地が出来上がり、雨水や伏流水が溜まったと言われている。流れ出す出口もない周囲230m 最深部7.8mの閉鎖的な池なのだ。
ここは、関西から少し離れた位置にも拘わらず、その神秘的な雰囲気を求めて、登山者が多く訪れるところである。

 周辺をブナなどの原生林に囲まれた池にたたずみ、青く澄み切った水面を眺めていると、本来の水の持っている透明感のあるブルー色に、ブナの緑が重ねられ、より深みのある緑色を呈している。
 この奥深い静寂なところでは、雨乞いの龍神伝説が、素直に伝わり、夜叉ヶ池には竜が住んでいるような錯覚さえ覚えるところだ。

『ある大干ばつの年、太夫は田で見かけた蛇に「雨を降らせてくれたらどんな望みも叶えよう」とつぶやきました。程なくして大雨が降り、村人は大喜びしました。
翌日山伏姿の蛇の化身が現れ、「娘を嫁に迎えにきた」と言います。
しかたなく愛娘の一人をお嫁に出しました。娘は蛇体となり、大蛇はそれを伴って夜叉ヶ池に入りました。のちに娘の女蛇は龍神となって、干ばつの年には雨を降らすと言われています』 

 この話、今から1200年ほど前、美濃国神戸の安八太夫という長者の伝承である。畔には、奥宮夜叉龍神社が祀られていた。

 泉鏡花作の戯曲「夜叉ヶ池」が、昭和53年に板東玉三郎主演で映画化されたこともあって、全国的にも有名になった池である。

登山口の石碑に刻まれていた。

    「花は人の目を誘う 水は人に心を引く 君も夜叉ヶ池を見に来たと云う」
     泉鏡花の戯曲「夜又ヶ池」より

 夜叉ヶ池に行くには、滋賀県側の池の又谷コースと福井側の岩谷コースがある。昨年6月前者のルートをとり、ニッコウキスゲを見に行った。夜叉ガ池・三周ガ岳

 国道303号線から坂内村川上より狭く危なっかしい池ノ又谷林道に入り、その終点が登山口。1時間ほどで幽玄の滝に到着、夜又の大岩壁を見ながら左へ大きく回り込んで、急峻な山道を登りきると夜叉ヶ池についた。このコースは、滝や壁という変化に富んでいたが、最後のガレた斜面を登りきりるのがきつかった。時間にして1時間半。

 今回、S主催で今庄から夜叉ヶ池へいく計画に参加した。既にニッコウキスゲが咲く時期も過ぎ、静かな夜叉ヶ池を散策できると思った。

 国道365号、県道231号で広野ダムを経由してその終点が登山口。夜叉龍神社の鳥居をくぐり、岩谷川に付けられた橋を渡ると、樹木がうっそうと茂る山道となり、真夏の太陽を遮断され快適な出発となった。

 標識が整備されており、途中の要所のところでは「池までXXXm」と目的地までの距離を表示されており、登山者の心を掴んでいた。途中、2段になった夜叉ヶ滝、トチノキなどの巨木をやり過ごすと本格的な登りとなった。進んでいくと「池まで500m」の表示となった。この辺りまで登ってくると、いくらか緩やかになった。木道が敷かれている辺りまで登りつめると笹帯となり、夜叉ヶ池にでた。どちらから登っても同じ程度の時間。この時期になると、さすがにニッコウキスゲ、カタクリ草に出会わなかった。
 このコースは、ブナやミズナラ、トチの木がある豊な自然林である。ところで、植林され森林帯は、青々と茂り、一見緑に覆われ癒されるが、均一な樹木が並んでいる樹林帯は、味気なくむしろ、不気味だ。

 その点、ここは、手付かずの自然林。色んな樹木が思い思いに枝を伸ばしていた。樹木は、より多くの太陽光を受けようと競い合って上に上にと枝を広げている。そして、樹が朽ち果てると、待っていましたと言わんばかりに若木が育つのだ。自然に織り成す世界は、長い年月をかけて一定の自分達の秩序を持っているようだ。この活気に満ちた自然林は、美しい。

 登山口には、思いもよらない樹齢400年と言う「カツラ」の木が出迎えてくれた。

 岩谷川沿いの山道を進んでいくと、樹齢300年樹周10mという岩谷の栃の木が見えた。栃もちの実ができる木だ。この栃の木は、山道から少し離れていたので近づかなかったが、その姿は遠くからでも巨木であった。 この辺りには「トチノキ」があっちこっちに点在していた。 深い沢に根を下ろした「トチノキ」は我々が通過する山道を通り越して上まで生長していた。したがって、手に取るように「トチノキ」のを見る事ができた。

 あとで知ったのだが、福井大学ワンダーフォーゲルOB会によると「木地師らによって夜又ヶ池発見された」ということのようだ。
 と言うのは、「トチノキ」は、木地師達が用いる素材であり、8百m以上の山地に自生する雑木で、建築用材に使用されないので比較的自由に伐れる樹種であった。したがって、これだけ多くの「トチノキ」があることは、木地師が入山せず、そのままの自然の原生林が残されていたのであろうと思っていた。

 最近、お祖父さんが木地師であった作家「水上勉」の本を読むにつれて、木地師達が木を伐ったが、木を守っていたことも知った。推測だが、木地師がこの谷に「トチノキ」を植えたのかもしれないと遠い昔を思い遣った。


 今回の計画では、三周ガ岳まで行く予定であったが、メンバーの多くが真夏の暑さにも耐えられなくなった。リーダーの判断により、夜叉壁を通り抜け笹薮に差し掛かったところで断念、引き換えした。ここが今回の到達点である。


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