昭和のトマトを栽培
2018年08月22日

昭和のトマトを栽培

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• 野洲市

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トマト桃太郎の誕生秘話が、「はなとやさい」情報誌タキイ種苗㈱2015年15.1に載せられていた。

 トマトは長距離の輸送に耐えられるよう、青いまま収穫されていました。果頭部が少しピンクを帯びた程度で収穫されたトマトは、店頭に並ぶまでの間に色づきますが、いくら赤くとも味や香りはありません。そこで、タキイのトマト育成チームが目指したのは、完熟してからも出荷できる”かたい”そして”甘くておいしい”トマトでした。

完熟出荷しても輸送に耐えうるかたさと日持ちのよさを備え、それまでのトマトに比べ糖度が2度ほど高く、酸味と旨みのバランスも優れた食味のトマト「桃太郎」が1985年誕生しました。

 このトマトは瞬く間に広く知られるようになり、トマトと言えば桃太郎となった。春先、園芸店の大玉トマトの苗は、桃太郎が所狭しと並んでいるが・・・・。

 家庭菜園を行っている私にとって、このトマト、気になることがあった。

トマトを樹上で完熟させて、すぐに食べるので、移動中の傷付き・かた崩れなどを全く気にすることがないな~。そのうえ、頭の中にもたげてきたのが、井戸水を手動ポンプでくみ上げた水に冷やした甘いと言うより、酸っぱい昔懐かしい味だった。

 あれこれ思いめぐらし、昭和初期に評判が良かった愛知・世界一・栗原の中から、「純系愛知ファースト」の種を手に入れ育てることにした。このファーストトマトは、桃太郎などの完熟型が普及する前の主流品種であった。

 桃太郎を長年育てていたので、トマト栽培の要領が分かっているつもりだった。

5年ほど連作していない畝を選定すれば、接ぎ木なしでも、枯らすことなく、4ケⅩ6~8段花房まで着果させていた。 ただ、種から育苗したのが初めてで、苗作りまで、2か月間、戸惑いながら世話に明け暮れた。 

3月10日 ポットに100粒を播種し、3月22日、頃から25ケ発芽。5月4日本葉が7~8枚で、花房に花が咲き始めた頃、20株の苗を畑に植えつけた。土壌障害が起こらないよう慎重に畝を選んで、株間を40cmぐらいと広めに苗を植えつけ、換気に配慮した。

 この品種は、生育旺盛なのか、脇枝分かれの生長点が見わけにくく、わき目採りに手こずった。また、ピンポン玉になったころ、葉が過剰に込み合えば、実が肥大しにくくなるので、摘葉を行い、実に太陽光がよく当たるように花房と同じ向きの葉っぱを切除した。

 この度トマトは、耐病性が備わっていないのに、接ぎ木もしていないので、細心の注意を払って管理した。

 さて、問題は、今年の異常天気だ。

今年は 夏日・真夏日・猛暑日どころでない、命にかかわる「危険な暑さ」と言う言葉を耳にするようになった。 日本列島が連日猛暑に見舞われ、記録的な暑さは体温を超え40℃最高気温や、観測史上初めて連続で38度を超えで、息も絶え絶えの日々だった。

 植物も同じだ。猛暑の上に、近畿地方の梅雨明けは平年より12日早く、昨年より4日早く、畑はカラカラになった。トマトは日照り草と呼ばれているように、例年では、ほとんど灌水せずに栽培していたのだが、今年は、灌水に追われた。

 植え付け本数も増やしておいのだが、予想を上回ったダメージを受けてしまった。これからという段階で、葉っぱが反りくりかえりだした。何だか普段と様子が違うな~と思うや否や、元気だった株の草勢が弱まった。地温が30℃以上の高温期になると、根部が細菌に侵されたのであろう。地温上昇防止や、懸命の灌水などを行ったが、半分失い10株ほどになった。

 結果的には、期待したほど採れなかったものの、今までにない美味しいもが採れた。

 未完熟なものをもぎ取り、試食すると、ねっとり感があり、食味はもう一つだった。諦め気味に実を放置しておくと、野性味の甘酸っぱい香りが漂い、カナブンが集まりだした。完熟の頃合いをよく知っているようだった。

 実の外見は先端が尖ったものや、やや腰高で肩が張りごつごつしていたが、暑い太陽に照り付けられた真っ赤に熟したトマトは、ゼリー状の部分が少なく、果肉がぎっしりつまり、食感はとても柔らかだった。

  その反面、予想外に皮が薄く、傷つきやすかった。そして日持ちがしなかった。さすが、桃太郎の完熟後出荷でき、その上に耐病性に優れたトマトであることを再認識させられた。

 以前から、トマトが豊富に採れたので、料理番組の見よう見まねで、スパゲッティを作っては食べていた。トマトだけでなくでは、物足らないとの思いで、ブロックベーコン・キノコ類などを入れていた。 その内、トマトだけでも、何だか美味しかった。

 今回、分かったことだが、トマトには、昆布と同じ旨み成分グルタミン酸が含まれている。豊潤な赤い実はグルタミン酸を多く含み、真っ赤に熟すほどに増加すると言われている。道理で、トマトだけのスパゲッティが美味しいことが分かった。更に、桃太郎は水分が多いが、純系愛知ファーストは、果肉がしっかりしているので、パスタに最適なトマトであることも知った。

 それではと、一束のスパゲッティに、5個の大型トマトのヘタ・皮・芯など舌触りの悪い部分を取り除き、ぶつ切りにして煮詰めた。

市販のケチャップでは、決して味わえない極上の出来上がりとなった。無論、トマトだけの旨みを味わった。

  トマトの美味しさを決めているのが、甘さ(糖)と酸味(有機酸)のバランスだといわれている。このつりあいは、時代によって変わってきている。

最近、人々の嗜好が、酸っぱさより甘いものを好むようである。ところで、一昔前では、野性味豊かな酸っぱいものが美味しいと思えた。

昭和の味を色濃く残している酸味の強いトマト米寿などを今後探ってみたい。

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